十九世紀フランス忘却作家メモ
Notice de l'écrivain français dans l'oubli

 Nom   姓 ALLAIS
 Prénom 名 Alphonse
 氏 名 アルフォンス・アレ
出生年月/出生地
Date et lieu de naissance
1854年10月20日、カルヴァドス県オンフルール
le 20 octobre, 1854 à Honfleur, Calvados
死亡年月/逝去地
Date et lieu de décès
1905年10月22日、パリ
le 22 octobre, 1905 à Paris
 経 歴
 Carrière
ノルマンディの風光明媚な港町オンフルールの薬局の子として生まれる。
風貌は英国人に通じるところがあるが、ノルマン人としての血筋にそうい
うものがあるかもしれない。17歳で大学入学資格(bac)の理科学を取得し
たあと家業を継ぐべく薬局の修業を始めるが、生来の、人をからかって喜
ぶ性分やデタラメな処方やふざけた忠告が父親の不興を買い、パリの薬
局へ送られてしまう。結果的にアレは薬業をそっちのけにカフェ「黒猫」
(シャノワール)に入り浸って、そこの文芸誌にコントを寄稿し、ついにはそ
この主筆となる。同時にいくつもの新聞のコラムをかけ持った。代表的な
のは「ジュルナル」紙の「おかしな人生」(La vie drôle)というコラムである。
カフェの奥まったテーブルで締切ぎりぎりまで毎週2〜3篇のコントを書き
続け、その数は1680篇に及び、ほかに詩や箴言集もある。もともと理工
科の頭の作りからか、彼の作品には薬理学・薬物学・化学反応に言及す
るものが多く、また様々な機械装置の新発明について人を食った論理を
展開させたりもした。地口、駄洒落、言葉遊びから徹底したブラック・ユー
モアに至るまで、人をかついだり、面食らわせたり、煙に巻いて喜ぶ彼の
真骨頂は類いまれな魅力を放っている。最後に彼の箴言から一つ:「決し
て笑わない人たちは真面目な人たちとは言わない。」Les gens qui ne
rient jamais ne sont pas des gens sérieux.


主要著作 Œuvres principales ( )は仮題
書  名 発表年 E-text 市販 ISBN
A se tordre       (45 contes)
(抱腹絶倒)
1891 G=69125
G=80843
ABU, BEQ
Stock, AA
Garnier Flammmarion
2002.03
2-080-
71149-0
Vive la vie        (28 contes)
(人生万歳)
1892 - Table ronde
1994.11
2-710-
30643-3
Le parapluie de l'escouade (39 contes)
(歩兵小隊の雨傘)
1893 Chez Alphi Arléa-Poche
1997.06
2-869-
59355-4
Deux et deux font cinq    (63 contes)
(二たす二は五)
1896 G=91325
Chez Alphi
  − 2-912-
21434-3
Le bec en l'air     (51 contes)
(軽はずみな軽口)
1897 Chez Alphi   −
Pour cause de fin de bail (52 contes)
(賃貸契約満了につき)
1899 G=204440   −
L'affaire Blaireau (Roman)
(ブレロー事件)
1899 BEQ Hibouq
Stock Diplom
J'ai lu
1999.01
2-277-
30043-8
A l'œil    (41 contes)
(ただ乗り)
1921 Lisieux
Chez Alphi
J'ai lu
1999.01
2-277-
30050-0


参考サイト Site de référence :
( 1 ) 文字の味方 文学の味方 Le Parti pris des lettres (松本隆明氏のサイト): アルフォンス・アレ『パンセ』
( 2 ) Chez Alphi (シェ・アルフィ): 冗談精神にもとづくアルフォンス・アレ全般の紹介サイト(仏文)


アルフォンス・アレ邦訳コント全作品目録はこちらへ⇒


邦訳文献集 Œuvres traduits
書  名 訳者 出版社 所収
悪戯の愉しみ (45篇 ) 山田 稔 出帆社
1975.11
(アルフォンス・アレーと表記)
挿画:久里洋二
悪戯の愉しみ (48篇 ) 山田 稔 福武書店
1987.01
福武文庫(アレーと表記)
ISBN : 4-8288-3043-X
奇妙な死
Une mort bizarre
澁澤龍彦 東京創元社
1969.06
創元推理文庫、怪奇小説傑作集第4巻所収 
ISBN : 4-488-50104-4
コラージュ  (他6篇)
Collage
小潟昭夫 国書刊行会
1988.03
フランス世紀末文学叢書1
「パルジファルの復活祭」所収
親切な恋人
Un bon amant
山田 稔 筑摩書房
1988.03
ちくま文学の森6
「思いがけない話」所収
夏の愉しみ
山田 稔 筑摩書房
1988.08
ちくま文学の森8
「悪いやつらの物語」所収
両棲動力
Betrachomatisme
山田 稔 筑摩書房
1988.11
ちくま文学の森11
「機械のある世界」所収
他人の体に
Dans la peau d'un autre
竹内廸也 白水社
1990.05
白水Uブックス「笑いの錬金術」所収
奇妙な死
Une mort bizarre
澁澤龍彦 筑摩書房
1990.07
澁澤龍彦文学館9「独身者の箱」
所収
親切な恋人
Un bon amant
山田 稔 岩波書店
1991.01
岩波文庫「フランス短篇傑作選」
所収 ISBN: 4-00-325881-9


[ アルフォンス・アレの『おなかがよじれる話』(抱腹絶倒?)]
2003.11.26
だいぶ前に松本さんからの影響で、アルフォンス・アレ(1854-1905)の格言を載せたことがありました。その松本さんが最近書かれたアレの「パンセ(箴言集)」を紹介するページを拝見してにやりとしています。(上記)
コント(掌編)というものは、悲劇・喜劇を問わず、とても短いながらも話の構成「何がどうなった」が強烈な形で刻まれ、まるで木版画のような明快さと印象の深さを与えてくれるので、それなりの引きずられるような魅力があります。春先に『古典落語』(春の巻)を読みふけって楽しんだのもここしばらくの「短編好み」の僕の傾向の底流にあるようです。
アレの作品は日本で唯一の短編集が山田稔編訳『悪戯の愉しみ』(河出文庫)だったと思っていましたが、「フランス短編小説選」「フランス・ユーモア傑作集」などアンソロジーにも意外にたくさん収録されているようです。

またここで偶然の話になりますが、Gallicaという仏国立図書館のデジタル書庫から簡単で短くて面白そうな本を引っぱり出してくることができるようになって、2003年10月のルヴェルの短編集に続いて11月はアレの短編集を読んで(100%理解できることはありえないのですが)面白くて夢中になっていたのでした。
ルヴェルの暗澹とした話から、一転して悪ふざけの小話になるのですが、いずれも19世紀末の風俗・習慣・時代背景が同じなので、作品を産み出すベースに共通項を多く感じて自然に移ることができたのです。この本は短編集 " A se tordre " (おなかがよじれる話) という題で41篇のコントが入ったアレの最初の出版物だったそうです。
http://gallica.bnf.fr/scripts/ConsultationTout.exe?O=80843

上のサイトはPDF表示なので見るのがちょっとおっくうですが、それを補って余りあるのが当を得た楽しいイラスト(ドラリュ=ヌーヴェリエール画)で、各篇に付いているので話がわかりやすくなります。この本は最近Folio版でも出版されました。2005年の10月には没後百年になりますので、この人のことも何とかしてあげたいな、と思い始めています。


十九世紀フランス忘却作家たち

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