十九世紀フランス忘却作家メモ
Notice de l'écrivain français dans l'oubli

 

Pseudonyme  筆名

 ERCKMANN-CHATRIAN  エルクマン=シャトリアン

Nom

ERCKMANN

  CHATRIAN

Prénom

Emile

  Alexandre

氏 名

エミール・エルクマン

 アレクサンドル・シャトリアン

出生年月/出生地
Date et lieu de naissance

1822年5月20日
ロレーヌ地方モーゼル県
ファルスブール
Phalsbourg

1826年12月18日
ロレーヌ地方モーゼル県
グランソルダ
Grand Soldat

死亡年月/逝去地
Date et lieu de
décès

1899年3月14日
ロレーヌ地方
リュネヴィル
Lunéville

1890年9月3日
パリ近郊セーヌ・サンドニ県

ヴィルモンブル
Villemomble

経 歴

Carrière

ロレーヌ出身の二人の作家の共同筆名。ファルスブールの大学で知り合い、20代半ばから一緒に文筆活動を始め、以後40年にわたり協力して作品を発表し続けた。二人で構想を練り、地方に残ったエルクマンが書き、パリに住むシャトリアンに送って完成させた。アルザス=ロレーヌ地方は1871年の普仏戦争の敗北によりドイツに併合されることとなり、フランスへの復帰を目指す政治的、民族的な気運は大きな高まりを見せ、彼らの作品も多くの注目を集めることとなった。作風としては、そうした国民感情に訴える歴史小説的な作品群と、アルザス=ロレーヌ地方の人々の慣習や風俗を生き生きと描いた生活風景の作品群に大別される。マスカーニのオペラの原作となった『友人フリッツ』が代表作として有名。その他でもホフマン的な雰囲気を受け継いだ幻想的短編の数々には独特の魅力と味わいがある。

 


主要著作 Œuvres principales ( )は仮題
書  名 発表年 頁数 E-Texte 市販
L'illustre Docteur Mathéus
(名高きマテウス先生 )
1859


Hughes-le-Loup
(狼貴族ユーグ)
1859 154 BEQ
Contes fantastiques
(幻想短編集)
1860 361 BEQ
Lisieux

L'ami Fritz
(友人フリッツ)
1864 350 Gallica=64151 LGF
Poche
Histoire d'un conscrit de 1813
(1813年の新参兵の物語)
1864 333 ABU
Gallica=64716
LGF
Poche
Histoire d'un paysan
(ある農民の語る時代史)
1869 123 Gallica=64493 Do
Bentzinger
Contes de la montagne
(山峡短編集)
1873 346 Gallica=102300
Confidence d'un joueur de clarinette
(クラリネット吹きの打明け話)
1880 337 Gallica=64611
Contes populaires
(民俗短編集)
1884 266 Gallica=64703


参考サイト Site de référence :
( 1 ) BDHL = Banque de Donnees d'Histoire Litteraire(仏文学史データバンク:仏語)
( 2 ) Collection Eléctronique de la Bibliothèque Municipale de Lisieux (リジュー市立図書館の電子書籍サイト)
( 3 ) Lycée et collège Erckmann-Chatrian, Phalsbourg (ファルスブール、エルクマン=シャトリアン中高校)
( 4 ) Portrait de Erckmann et Chatrian(エルクマンとシャトリアンの肖像)
( 5 ) ABU La Bibliothèque universelle (ABU電子図書館)
( 6 ) BEQ : La Bibliothèque éléctronique du Quebec(ケベック州電子図書館)


邦訳文献集 Œuvres traduits
書  名 訳者 出版社 所収
見えない眼
L'œil invisible
平井呈一 東京創元社
1985.05
創元推理文庫「恐怖の愉しみ」上
  同   同 牧神社
1974.02
「こわい話・気味のわるい話」1
魔女のたくらみ
L'œil invisible
千葉幹夫 講談社
1996.12
青い鳥文庫Kシリーズ「ふしぎな足音」
謎の素描
L'esquisse mystérieuse
内田善孝 透土社
1990.02
「ふらんす幻想短篇精華集」下巻
なぞのスケッチ
L'esquisse mystérieuse
榊原晃三 金の星社
1986.12
世界こわい話ふしぎな話傑作集「死者のしかえし」
謎のスケッチ
L'esquisse mystérieuse
川口顕弘 国書刊行会
1983.12
「十九世紀フランス幻想短編集」
降霊師ハンス・ヴァインラント
Le cabaliste Hans Weinland
山下 誠 白水社
1983.02
「フランス幻想文学傑作選2」
〜ロマン派の狂想と幻影
死者のバイオリン
Le violon du pendu
南條竹則 アトリエOCTA
2002.11
雑誌「幻想文学」65号
ISBN : 4-900757-65-9
マダム・テレーズ
Madame Thérèse
小宮山桂介 鳳文館
1886





鴉のレクィエム
Le requiem du corbeau
写原祐二 (試訳)
大蟹蜘蛛
L'araignée-crabe
写原祐二 (試訳)


エルクマン=シャトリアンに関する評論(抜粋)
『フランス幻想文学史』マルセル・シュネデール(著)、篠田知和基(訳)
Histoire de la littérature fantastique en France; Marcel Schneider; Fayard 1985
第8章:ホフマンの名による変奏曲 国書刊行会、クラテール叢書8;1987年8月刊 
・・・エルクマン=シャトリアンが得意の腕をふるうのは短篇においてである。まず彼らは細部の写実や筆使いにおいて腕の冴えを見せる。(・・・)風俗や風景における真実性は超自然の侵入をいっそう恐ろしいものにする。彼らはアルザスの村里や黒森(シュヴァルツヴァルト)やラインの岸辺や民衆的な風景や農家やささやかな町屋の家庭生活を描くのを得意とする。(・・・)短篇にはグロテスクな人物たち、滑稽な姿、恐ろしげな老人たちなどが登場し、そこに巧みな観察が付与されて、生命感が盛りたてられる。すると平穏なアルザスが一転して騒乱の国になり、波瀾の過去を呼び起こし、けたはずれの夢想を展開する。

『文学から見たフランス鉄道物語』壇上文雄・著、駿河台出版社、1985年12月刊
第2章;隆盛期のフランス鉄道文学 17.エルクマン=シャトリアンと鉄道文学賞
・・・エルクマン=シャトリアンは、これこそが現実であり人生であるという錯覚を読者に抱かせるだけの完結で適格な描写力を備えているので、ゾラのようにいつ終わるともなくくどい描写をしない。したがって読者は小説の主人公の思想に、やや深みが欠けるとは感じられても、その心情をすなおに受取り、いやみを感ぜず、自然に流れる筋をたどれるのである。・・・

『歴史と表象』小倉孝誠・著、新曜社、1997年4月刊
第4章 フランス革命の表象―デュマとエルクマン=シャトリアン
・・・「テレーズ夫人」の語り手は、フリッツェルという名の十歳の少年であり、(・・・)目の前に読者がいるかのように親密な口調で語りかけ、それがときには微笑を禁じえないような無邪気さを醸し出すとともに、物語に独特の調子をあたえている。これは、エルクマン=シャトリアンの全作品にも通ずる特徴である。・・・


十九世紀フランス忘却作家たち(表題へ)

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