十九世紀フランス忘却作家メモ
Notice de l'écrivain français dans l'oubli

 Nom   姓  GOURMONT
 Prénom 名  Rémy de
 氏 名  レミ・ド・グールモン
出生年月/出生地
Date et lieu de naissance
1858年4月4日、ノルマンディ地方オルヌ県バゾシュ・ゾ・ウルム
Le 4, avril, 1858; Bazoches-au-Houlme, Orne
死亡年月/逝去地
Date et lieu de décès
1915年9月27日、パリ
Le 27, sep. 1915; Paris
 経 歴
 Carrière
 ノルマンディの名士の家に生まれ、豊かな自然と穏やかな家庭環境で
育った。カーン大学で法律を学んだが、講義よりも図書館で書物に親しむ
のを好んだ。1881年パリに出て国立図書館の司書となるが、1891年国政
を風刺する著作「愛国心という玩具」(Joujou patriotisme) によって罷免さ
れる。すでに文筆活動を活発に行っていたが、20代後半から顔面の狼瘡
に罹り、以後自室に隠棲して書物を紐解きながら、雑誌への寄稿を続ける
生活を送った。文芸雑誌メルキュール・ド・フランスなどの創刊・編集にたず
さわり、小説、詩から言語学、美学に関する評論や時評まで膨大な著作
を残した。特に詩作や小品は色彩感覚を花や自然とともに巧みに描き出
す気品にあふれ、象徴主義(symbolisme)的な表現とともに孤高の知性の
きらめきをとどめている。


主要著作 Œuvres principales(E-テキストで参照可能なものを中心に) 
( )は仮題、邦訳の△印は部分訳
書  名 発表年 邦訳 E-text 出版社
Sixtine ; roman de la vie cérébrale
(シクスティーヌ、頭脳生活の小説)
1890 × BNF
G=81600

Le fantôme
(幻影)
1893 × BNF
G=64079

Le Château singulier
サンギュリエ城
1894
倉智恒夫
BNF
G=64079
国書刊行会
書物の王国9
Histoires magiques
(幻惑的な物語)
1894 BNF
G=229192
  −
  Le secret de Don Juan
  ドン・ファンの秘密


堀口大學
AmatRG ちくま文庫 1992
詩人のナプキン 
  Les yeux d'eau
  水いろの目


堀口大學
ちくま文庫 1992
詩人のナプキン
  Le magnolia
  白木蓮


月村辰雄
AmatRG 白水社 1983/
幻想文学傑作選3
Le Pèlerin du silence
(沈黙の巡礼者)
1896 × BNF
G=81603

Le Livre des masques
仮面の書
1896
及川 茂
BNF
G=81601
国書刊行会1984/
世紀末文学叢書15
Le Deuxième Livre des masques
仮面の書、第2集
1898
及川 茂
BNF
G=81602
国書刊行会1984/
世紀末文学叢書15
Esthétique de la langue française
(フランス語の美学)
1899 × BNF
G=29567
G=88539

La Culture des idées
(観念の涵養)
1900 × BNF
G=81022

Simone
シモーヌ
1901
堀口大學
BNF
G=74433
新潮文庫 1974
グールモン詩集
Problème du style
(様式の問題)
1902 × BNF
G=99853

Physique de l'amour ; essai sur l'instinct sexuel
愛の博物誌
1903
小島俊明
出帆社 1976
Promenade littéraires, 1ère série
文学散歩、第1集
1904 × BNF
G=23505

Promenade littéraires, 2e série
文学散歩、第2集
1906 × BNF
G=23506

Promenade littéraires, 3e série
文学散歩、第3集
1909 × BNF
G=23507

Promenades philosophiques
哲学散歩
1905 × BNF
G=23493

Une Nuit au Luxembourg
(リュクサンブールの一夜)
1906 × BNF
G=205340

Un cœur virginal
乙女ごころ
1907
竹村 猛
角川文庫 1958
Couleurs ; suivis de Choses anciens
色づくし (昔のこと)
1908
重信常喜
BNF
G=80504
書肆山田 1992
Lettres à l'Amazone
アマゾーヌへの手紙
1914
小野万吉
国書刊行会1990/
世紀末文学叢14
Lettres intimes à l'Amazone
(アマゾーヌへの親密な手紙)
1927 × BNF
G=205338

Des Pas sur le sable
沙上の足跡
1914
堀口大學
第一書房 1930
Lettres à Sixtine
(シクスティーヌへの手紙)
1921 × BNF
G=205339

Fin de promenade et 3 autres contes
(散歩の終わり、他3篇)
1925 × Lisiieux

※ 上記 E-text の参照先
(1) G = BNF Gallica
http://visualiseur.bnf.fr/Visualiseur?Destination=Gallica&O=NUMM-80504
(最後の数字5または6桁を打ち直して改行する)
(2) Lisieux
http://www.bmlisieux.com/sommaire.htm#anchor.n
(3) Biblisem
http://www.biblisem.net/indexgen.htm#g
(4) AmatRG
http://www.remydegourmont.org/


参考サイト Site de référence :

( 1 )

Les amateurs de Remy de Gourmont(レミ・ド・グールモン愛好会:仏語)

( 2 )

BDHL = Banque de Données d'Histoire Littéraire(仏文学史データバンク:仏語)


グールモンの『色づくし』について

数日前のことでしたが、図書館に行って中をぶらぶらして帰ろうとしたときに、書棚にあった一冊の本に目がとまり手に取りました。学生の頃、この作家の『乙女ごころ』というウブな青年好みの題名の文庫本を読んだことがあって、彼が若い頃に病気で容貌を損なってから人づきあいをせずに一生のほとんどを象牙の塔の隠者のように過ごしたというのが何となく気になった因縁なのか、それでなくとも題名が面白そうなので借りてきました。隠れた艶本かもしれないという期待が皆無だったわけではありません。それとコントというか掌編というか一つ一つが短い話で、それぞれの色「黄」「赤」「黒」「白」「青」「緑」などの花々や宝石にまつわるもので、訳者自身の制作による版画が挿絵になっていて非常にしゃれた装丁になっていました。(しかし10年以上も前に出た本のことを今さらこんな風に言ってもしょうがない。)
「色」という文字を私たちは自然と「エロ」の意味に含ませて考えてしまいますが、内容はそれにたがわずに男女の性愛の心理を簡潔に描いていて味がありました。
《人間はつまるところ消化器と生殖器からなっている》
これは「名言集」を集めたサイトにあったグールモンの箴言のひとつですが、人間だけでなく動物は、といったほうが包括的、つまり人間も動物の一部類なんだとこの頃思うことが多いです。
「人生は淫蕩から淫蕩へと永続する。目は衣装の下に美しい三角形を想像する。腹部は互いに磁石となって愛する者を引きつける。愛するとは腹部から腹部へのことだ。」(「淫蕩の道」より重信常喜氏の訳文を参考に試訳)

男女が対面する究極には性愛があるということは生命の当然の真理ですが、この作家が整った巧みな文体の中にそれをさらりと描いているのがとても気に入りました。僕もKanjikanさん、Autelさん、Matsumotoさんらのフランス純文学評論活動の影響を大きく受けたためではないかと思って感謝したいところです。このグールモンもほとんど忘れ去られた作家ですが、ヒマが出来たら素人研究でもしてみたいような気になっています。


十九世紀フランス忘却作家たち

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